コーヒーの香りから始まる朝。視力を失った愛犬のために、今日もできることを考える

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朝の空気が少しずつ澄んでくる季節。窓の外には薄い青が広がり、深呼吸すると胸の奥まで冷たい空気が入り込んでくる。そんな朝に欠かせないのが、熱いコーヒーだ。
マグカップを両手で包み込み、一口含むと、眠っていた身体のスイッチがゆっくりと入っていく。香り、苦味、喉を抜けた後にふわりと広がる余韻。この何気ないルーティンは、私にとって一日の始まりを整えてくれる大切な時間だ。

しかし、どれだけ穏やかな朝であっても、胸の奥に引っかかるものがある。ふとした瞬間に浮かぶのは、愛犬の姿だ。


◆視力をほとんど失った愛犬の世界

うちの愛犬は、長い時間を共に過ごしてきた大切な家族だ。しかし最近、緑内障の進行が止まらず、視力をほとんど失ってしまった。以前は家の中を軽快に歩き回り、お気に入りのおもちゃを咥えて「遊んで」とアピールしていたのに、今では散歩の時以外ほとんどの時間をお気に入りの場所で静かに眠っている。

目が見えなくなってから、彼の行動は大きく変わった。段差の前で立ち止まる時間が長くなり、部屋のレイアウトが少し変わっただけで不安そうに動けなくなることがある。
そして何より、病院へ向かう道中の表情が辛い。専用のバスケットに入れているのに落ち着かず、体の向きを変えては小さく震えている。外の景色も見えず、どこへ向かっているのかもわからない。その不安を思うと、胸がぎゅっと締め付けられる。


◆獣医師から聞いた「視界が暗くなるほど増す不安」

診察のたびに、獣医師から丁寧な説明を受ける。
「視界が暗くなると、ワンちゃんは私たちが想像するよりずっと不安になります。見えないというだけで、世界の情報が一気に減ってしまうからです。」

その言葉を聞いたとき、ハッとした。
人間は困ったとき、「見る」ことで状況を判断できる。しかし犬にとっては、視力は人間ほどの比重はないと言われつつも、完全に失われた時の不安は計り知れない。特にシニア犬は変化に弱く、知らない匂いや音がストレスにつながりやすいのだという。

「見えなくなった分、匂い、音、そして“飼い主の気配”がより大切になります」

そう言われた瞬間、自分ができることはもっとあるのではないかと考えるようになった。


◆飼い主としての葛藤と、愛犬の“安心”のためにできること

視力を失った愛犬を前にすると、飼い主としての葛藤がつきまとう。「もっと早く気づけたらよかったのでは」「今、不安を取り除いてやれているだろうか」。
答えの出ない問いが自分を責める。

けれど、落ち込んでいるだけでは何も変わらない。
彼が安心できる環境を整えること。生活動線を変えすぎないこと。声をかけるときは必ず近くに寄って触れてあげること。そして病院や散歩のときは、匂いや音の情報をたくさん届けてあげること。

そんな“小さな積み重ね”が、彼にとっての安心材料になる。


◆だから今日、私は「音」を作ろうと思う

コーヒーを飲みながら、愛犬がぐっすりと眠る姿を思い浮かべたとき、ひとつの考えが浮かんだ。

——彼のために音を作ってみよう。

目が見えなくても、音は届く。
音は空気の振動であり、距離や視界に左右されない。
そして犬は、人間よりもずっと繊細に音を感じ取っている。

私が作る音が、彼にとって安心の合図になるかもしれない。
落ち着ける時間を支える“やさしい音”を生むことができたら、それはきっと彼の世界を少しだけ明るくしてくれるはずだ。

音楽づくりは私にとって表現の一つだが、今日の曲はそれ以上の意味を持つ。
大切な家族へ、心の中の想いを届けるための音。
それが、今日の私のスタートラインだ。


◆終わりに:見えない世界でも、伝えられるものはある

愛犬の視力が戻ることはない。
その現実は受け入れなければならないけれど、見えなくなったからこそ届けられる安心もあるはずだ。

私は今日もコーヒーを飲みながら、ゆっくりと彼のことを思い、そして音を紡いでいく。
目には見えないけれど、確かに伝わるものを信じて——。

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